「えっと確かこのあたりだったような……」
日曜日の昼下がり。たまたま仕事で実家付近へ来ていたヒロキは、午前中にさっさと仕事を終わらせ、スーツ姿のまま裏山を探索していた。子供の頃、よく遊びに来ていた裏山である。隣には恋人のマミを連れている。
「ねぇ、さっきから何探してるのよぉ」
マミが拗ねた声を出す。胸元の開いたタンクトップとミニスカート、それにハイヒールという出で立ちは緑一色の風景にアンマッチである。居心地が悪そうに、しぶしぶヒロキの後をついてきている。
「子供の頃、ここらへんに秘密基地を作っていたんだ。さすがにもう残っていないだろうけど、どんな風になっているか見てみたくて」
「えー、ノスタルジーってやつ?」
マミは興味なさそうに言う。そんなことよりも靴が土で汚れてしまうことを気にしているのだろう。
ヒロキはどんどん奥に進んでいく。どことなく見覚えがあるような、やっぱり気のせいのような、不思議な気分である。
ガサ、と草をかき分けた瞬間、ヒロキは目をみはった。
「あったぞ!」
まさに、ヒロキが子供の頃に足しげく通った秘密基地がそこにあった。信じられないことに、秘密基地は十年もの歳月が流れたにもかかわらず、原型を想像できるほど形をとどめていた。
家からこっそり持ち出した羽毛布団、森を探検するときに使ったTシャツなど……雨にさらされ汚れてはいたが、確かに記憶にあった。